水神の娘
「・・・せ。・・・・ませ。目を覚ませ。」
「ん…師匠…?」

誰かに呼ばれているようで目を覚ませば
暗闇の空間にいた。

「ここは…」
「ここは時の狭間。」
「貴方は誰?」
「私は…そうだな、神とでも言っておこうか。」
「神様…」
「紅実、お主、自分が誰だか知りたくはないか?」
「え…」
「私はお前の存在を証明できる場所に導く事ができる。」
「私の…」
「私に身を任せるか?今の世界を捨てることになるが…」

今の世界を捨てる…
今まで育ててくれた師匠に申し訳なさがないわけじゃない。
けれど、そこに留まる理由も見つからない。

「行く。貴方が導く先へ。」
「良い返事だ。」

行きつく先がどこなのか、声の主はなぜ姿を現さないのか
口を開こうとした矢先、
ぐるぐると視界が回り始めた。


「…わが息子を、宜しく頼む…」
神と名乗る声の主が呟いた言葉は漆黒の闇に飲み込まれていった。
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