黒木健蔵の冒険
「おじいさん、お願いします」


「いらっしゃい。お急ぎじゃあないですか?」


今日、2人目の客は、さっきのサラリーマンと年周りは、そう変わらないが、物腰の柔らかい感じの良い青年だった。彼もまた、柚木華製薬の社員だった。

「あの、靴は履いたままで磨いていただけるんですか?」


彼が恐る恐る聞く。


「靴磨きは、初めてですか?」


「はい。今日は、大事な取引先との面会があったのですが、朝、靴を磨くのを忘れてきてしまって」


「それは、良い心がけですな。履いたまま、この台の上に靴を乗せて下さい」

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