わたしとあなたのありのまま ‥3‥
「中庭。すぐ掛け直すから、ごめん」

早口で答えれば、

『いい、もう掛けてくんな。俺、寝るから』

田所は子どもみたいに拗ねてしまった。


ああもう……と心の中で溜息を吐きながら、断腸の思いで電話を切った。



「良かったのに」

ボソリと呟いた進藤くん。

ゆるゆると目線を上げれば、彼は申し訳なさそうに私を見下ろしていた。


「そういうわけには……」

私もボソボソと小声で返す。何て言えばいいのかわからなかった。『そこにいられたら、電話の邪魔』だなんて、そんな本音はいくら私でも言えない。


進藤くんはふっと苦笑して、

「隣、いいかな?」

と遠慮がちに聞く。


どうぞ、とベンチの上のお尻を横へスライドさせて端っこに寄った。進藤くんが座るスペースぐらい充分あったんだけど。

進藤くんは、私から不必要なほど距離をとって腰掛けた。

けれど、膝の上で組んだ両手を伏し目がちに見詰めているだけで、中々口を開こうとしない。


「どうしたの?」

しびれを切らして私から声を掛ければ、「えっ?」と何故だか酷く驚いた様子でこちらを向く。


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