愛を教えて ―番外編―

後編

工場正面のシャッターを開け、四台のバイクが入って来た。改造を施しているのは間違いなく、爆撃でも受けたような音が工場内に反響している。


「亨(とおる)! ここに来ちゃいかん、と言っただろう!」


誘拐犯の老人――三浦は、男の名を呼びながらバイクに近づいた。


「いるのね。今でもこんな暴走族……だったかしら?」


美月が呆れたように言う。


「……そうだね。しかも、あのおじいさんと知り合いみたいだ」


結人は嫌な予感を覚える。


「ねえ、もう放って帰りましょう。携帯も取り上げられてないんだし、早く連絡を取ったほうが無難よ」


美月の言うことは正しい。

仮にも誘拐されたのだ。クリスマスイブの夜、しかも家で予定外のことが起こったこの日に、である。結人と美月が帰らないとなれば、どれほど心配しているか知れない。

しかも、美月はか弱い少女なのだ……とてもそうは見えないけど。

きっと、別の心配もしているだろう。


< 118 / 283 >

この作品をシェア

pagetop