愛を教えて ―番外編―
「お母さんは僕が悪いって言うの? 僕の味方じゃないの?」

「お母さんは大樹が悪いと言っているんじゃないの。大樹が他の子をいじめる北斗くんを止めようとしたのはよくわかります。それはとてもいいことだと思うわ。でもね……いいことをしても、怪我をさせたときは“ごめんなさい”と謝らなくてはダメ。そうでないと、お母さん、大樹がいいことをしたと褒めてあげられないわ」
 

大樹自身もわかっているのだ。そうでなければ帰ってすぐ、母親に報告したはずである。

言わなかったのは、心のどこかに『怪我をさせた』という思いがあるから……。


「でも……北斗くんはどうして、お友だちの描いた絵を破ったりしたのかしら?」

「それはっ! ほんとうのことを言われて怒った北斗が悪いんだよ!」


大樹はむきになって言い返す。


「ほんとうのこと?」

「うん」

「どんなことかお母さんにも教えて」

「北斗のお父さんは、いっぱい悪いことをしてるんだって。だから……」


北斗の隣に座っていた少年が、北斗の描く絵を見て言ったそうだ。『あ、はんざいしゃの顔だ』と――。


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