愛を教えて ―番外編―
まさかとは思うが、仕事絡みで足もとをすくわれないとも限らないのだ。悲しいかな、卓巳は慎重にならざるを得ない立場だった。

すると、藤臣もそれを察したのだろう。

昔のことが原因で子どもたちの関係を悪くしているなら、そういった色メガネはなしで、子どもたちの好きにさせてやって欲しい。

そう言って再び頭を下げる。


卓巳もいよいよ、自分も態度を改める必要がありそうだ、と思った。

万里子に『十年以上前のこと』と言われた時、『今は違うとどうして言える』と反論した。だが、それは自分の誤りだったことを知る。


「確かに、色メガネで見ていたことは認める。お前は一生変わらないと、勝手に思い込んでいた。態度を改めることを約束する。だが、十七年前のことは別だ。いや、女のことはどうでもいい。彼女と……その」


卓巳がダメだった、と女から聞き、それを大学中に言いふらしたのは藤臣だ。


「許してやる代わりにひとつ条件がある」

「俺が個人的にできることなら……」


藤臣は少しけん制しつつ、真剣な顔つきで答える。

そんな藤臣に卓巳が突きつけた条件とは――。


「ど……どうやったら、娘ができるんだ?」


片付け途中の焼きそばコーナーに、藤臣の爆笑が広がった。


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