愛を教えて ―番外編―
そう言ってニッコリと微笑み、軽く会釈しながら近づいてきたのは一条の妻、夏海だった。

卓巳と近い年齢だと聞いている。

アイボリーの大きめのセーターを着て、下は黒のスパッツを穿いていた。白いエプロンがどうやらデニム地らしい。そして、お腹の辺りがふっくらとしていて……。


「あの、お子さんですか?」

「ええ。六ヶ月目なの。悪阻が長引いて……今月に入ってようやく治まってくれたのよ」

「それは……おめでとうございます」


万里子は意識的に弾んだ声を出した。明るい声とはウラハラに、一オクターブほど気持ちは落ち込む。


「一条先生。結婚三年……四年目で、新婚気分なのはわかりますが、今からだと還暦を過ぎてもお子さんは成人してないでしょう? 行き当たりばったりはいい加減にして、少しはきちんと家族計画をされたらいかがです?」

「た、卓巳さんっ!」


万里子はビックリして卓巳を止める。

卓巳の発言が万里子のためなのは充分にわかっている。でも、それを言葉で説明することはできない。とはいえ、こんなけんか腰で言われたら、一条も怒り出すだろう。自分のせいで信頼する先輩と決裂し、卓巳の仕事に影響が出たりしたら……。

だが、一条も毒舌家である卓巳の扱いにはかなり慣れてるようだ。


「わかった、わかった。お説はもっともだが、お互いに嫁さんを困らせるのはよそう。――今日は息子の六歳の誕生日なんだ。よかったら、一緒に祝ってやって欲しくてね」


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