愛を教えて ―番外編―
「奴からも結婚式に招待されてたんだが……あっちは中止だと連絡があった。何かしでかしたらしい。知ってるか?」


一条の質問に卓巳は何も答えずにいた。

情報通の一条が事情を知らないはずがない。本気で聞いている訳ではなく、卓巳の反応を探っている様子だ。


卓巳の知る限り、美馬グループのやり口は違法の領域に踏み込んでいた。

一条が弁護士として関わることは決してないと聞いている。しかも、卓巳には美馬がお家騒動を目論む気配すら察知していた。

基本的に人が好く、面倒見のよい一条のこと。やたら目立つ厄介な後輩のことも気にかけているのだろう。

だが卓巳の目には、美馬がいずれ女で失敗することなど、自明の理に思えた。


意趣返しのつもりはなかったが……気を許した卓巳はつい、余計なことを口にしてしまう。


「美馬とは関わりを持つ気はありませんよ。第一、奴は僕の彼女を奪ったんだ。あのときの悔しさは忘れられるものじゃない!」


――カタン。


卓巳が唾棄するように呟いたとき、背後で音がした。

振り向いた卓巳の目に映ったのは、万里子だった。


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