愛を教えて ―番外編―
卓巳の心に深い傷を負わせた女性がいる。
母親ではなく、大学時代に愛した女性――そのことを知ってはいたが、『忘れられるものじゃない』そうなふうに卓巳は言った。
万里子の耳にそれは、彼女への愛を忘れられない、と聞こえていた。
「今日はご馳走様でした。――悠くんと桜ちゃんにも、今度は遊びに来てね、とお伝えください」
駐車場は家の半地下にあり、一条と夏海は揃って見送りに来てくれた。
万里子は、卓巳に対する複雑な思いを隠し、ふたりには笑顔を見せる。
「いいえ、なんのお構いもできなくて……この人が、藤原社長に“幸福”を見せつけてやりたいって。でも、それで新婚さんを招待しても……こっちがあてられるだけなのに、ね」
夏海は言いながら、幸福を絵に描いたような笑顔を見せる。
実は、万里子の誤解はついさっき解けたばかりだ。万里子は、長男の悠は一条の連れ子に違いないと想像していた。
万里子の勘違いに夏海は『よく言われるの』と笑いながら、
『でも、不倫とかじゃないのよ、誤解しないでね。聡さんは不誠実でも女性にだらしない人でもないの。私も彼も少し運が悪かっただけ……。人生に必要な遠回りってあるものね』
そう言って、夫のことを必死で庇っていた。
母親ではなく、大学時代に愛した女性――そのことを知ってはいたが、『忘れられるものじゃない』そうなふうに卓巳は言った。
万里子の耳にそれは、彼女への愛を忘れられない、と聞こえていた。
「今日はご馳走様でした。――悠くんと桜ちゃんにも、今度は遊びに来てね、とお伝えください」
駐車場は家の半地下にあり、一条と夏海は揃って見送りに来てくれた。
万里子は、卓巳に対する複雑な思いを隠し、ふたりには笑顔を見せる。
「いいえ、なんのお構いもできなくて……この人が、藤原社長に“幸福”を見せつけてやりたいって。でも、それで新婚さんを招待しても……こっちがあてられるだけなのに、ね」
夏海は言いながら、幸福を絵に描いたような笑顔を見せる。
実は、万里子の誤解はついさっき解けたばかりだ。万里子は、長男の悠は一条の連れ子に違いないと想像していた。
万里子の勘違いに夏海は『よく言われるの』と笑いながら、
『でも、不倫とかじゃないのよ、誤解しないでね。聡さんは不誠実でも女性にだらしない人でもないの。私も彼も少し運が悪かっただけ……。人生に必要な遠回りってあるものね』
そう言って、夫のことを必死で庇っていた。