愛を教えて ―番外編―
卓巳は怒鳴りつけようと思ってやめた。

時間の無駄だ。どのみち、明日の予定で今からの変更は不可能だろう。


こんなことなら、まだ中澤朝美に任せたほうがよかったか……。彼女が仕事に目覚めるか、無難に結婚して職務に専念してくれれば言うことはないのだが。

会社の人間ではなく、やはり個人秘書を雇うべきかもしれない。この熊谷では、宗が戻るまで卓巳の神経が持ちそうにない。

そんなことを考えつつ、


「もういい。私は二日間休みだ。君もしっかり休んで、せめて一を聞いたら五か六くらいはわかるようになってくれ。それ以下なら……君はかなり長い休みを取ることになる」


なるべくソフトな口調で嫌味を言う。


だが、婉曲《えんきょく》過ぎて伝わらなかったらしい。 


「いえっ、とんでもありませんっ! 二日間もお休みをいただければ充分です!」


熊谷はお許しが出たと思ったのか、ホッとした表情で卓巳に向かって笑った。


……卓巳が挫けそうになったのは言うまでもない。


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