愛を教えて ―番外編―
(こ、これは……二階でちょっとした真昼の情事……とは言わないか、夫婦だし。でも、そういうのを楽しもうというお誘いなのか?)


そんなイロイロを考え、卓巳の鼓動は高まるが、


(イヤイヤ、待て。万里子のことだ。本当に二階が見てみたいだけかも知れない。結婚式のときは二階を封鎖したままだったし……)


「卓巳さん、早く来て!」


カタンカタンと小さな足音を立てながら、万里子は螺旋階段を昇っていく。

白いブラウスとVネックのセーター、マキシ丈のスカートがふわりと広がり、細い足首が見えた。

てきめん、一旦落ち着かせようとした心臓が早鐘を打ちはじめ……。


「万里子! ちょっと待ってくれ、僕も一緒に」


これまでの“離れ”のデートは手を繋いで口づけるだけで精一杯だった。でも今なら……。

新しい展開に期待を馳せ、万里子を追いかける卓巳であった。


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