愛を教えて ―背徳の秘書―
「中澤くん。ああいう言い方はまずいだろう。それとも、志賀くんに突き落とされたとでも?」


以前、皐月の代わりに太一郎が出席した重役会で使われた会議室だ。

今日は、ヨーロッパ向けの物流部門関係各社を呼び、『アイスランドの火山噴火に伴う空港閉鎖のついて』という議題で話し合われた。

そう白熱した会議にはならず、予定時間を少し越えた程度で終了し、社長をはじめ全員が引き上げたあとだった。


宗は片付けを手伝いながら、余った書類を集める朝美に、今朝のことについて意見したのだ。


「さあ、どうかしら。でも、居心地を悪くするのが目的ですもの」


朝美の言うこともわからないではない。

だが、限度を越えた怒りが宗に向いては堪ったものではない。ましてや雪音の存在を知られたら……。何をしでかすかわからない、という状況は避けたい。

宗としては、あくまで穏便に済ませたいのだ。

だが、朝美は宗の同意を得たことで、あからさまに香織を攻撃し始めた気がする。


宗が深く息を吐き、最後のブラインドを下ろして会議室を後にしようとしたとき……。


「痛……」


後方で朝美の声が聞こえた。


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