愛を教えて ―背徳の秘書―
「タオルと下着、歯ブラシ、コップ……入院の案内に書かれていたものは大体揃っています。それと、会社の方が入院手続きをされてましたので、問題ないと思われます」


雪音は朝美に用件を伝えながら、テキパキと荷物を片付けた。

部屋はふたり部屋だ。隣は自宅で転んで骨折したという、七十代の老婦人であった。


「まあ、万里子様は本当にお優しい方ですわね。雪音さん……でしたかしら? 奥様にお礼申し上げておいてくださいね」


たった今治療が終わり、ベッドに横になったばかりのようだ。局所麻酔が効いているのか、痛みはないらしい。

だが、右足首を固定され、腕にも包帯を巻いている姿を見ると、雪音も宗との関係は質問しづらい。

ましてや、怪文書のことは……隣に人がいるのに、口にすべき話題ではないだろう。


「では、私はこれで」


長居は無用だ、とばかり、雪音は部屋を出て行こうとした。

だが、先手を取ったのは、やはり朝美だった。


「悪い男ね。あなたのような純真なお嬢さんに手を出すなんて」

「どういう意味ですか?」

「宗から、昨夜聞いたのよ。あなたとの関係を」

「何を今さら……」


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