愛を教えて ―背徳の秘書―
声を上げそうになり、雪音は慌てて隣のベッドに目をやった。老婦人はスウスウ寝息を立てている。


宗と同じく、隠し撮り写真と怪文書の犯人は朝美に違いない。雪音もそう思っていた。

雪音には、朝美のとぼけた口調が我慢ならない。


何もかも――そう、宗と雪音の親密なシーンまで覗き見ながら、白々しいにも程がある。


「あれは、エレベーターの防犯カメラの映像なの? それとも隠しカメラでも仕掛けたわけ? どっちにしても犯罪だわ!」



実は……送られてきた写真はもうひと組あった。

それは、万里子と本社ビルを訪れた日の写真。

場所は薄暗い地下駐車場、一台の車のフロントガラス越しに雪音の白い脚がくっきりと写っていた。

もっと鮮明なのはエレベーター内での写真だ。上部からのショットで顔はよく写っていないが……服装と前後の様子から、明らかに宗と雪音である。

その、あまりにも生々しい写真だけは、どうしても卓巳や万里子に見せることができなかった。


「犯罪? エレベーターがどうかなさったの?」


眉根を寄せ、朝美はオスカー女優顔負けの表情で、雪音の質問に質問で答えた。


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