愛を教えて ―背徳の秘書―
雪音は朝美に言われたとおり、新小岩の駅で電車を降りた。

その駅から徒歩十分程度の距離に、志賀香織のコーポがあるという。



『写真、写真って煩いお嬢さんね。怪我人を労る気持ちはないのかしら?』


朝美は苛々した様子を見せ始める。

彼女が宗の恋人であるなら、どうしてあんな写真を雪音に送りつけてきたのか。恋人の宗に見せて、浮気を責めればいいはずだ。

何も、雪音と宗が彼の車やマンションで……そんな破廉恥なシーンを写真に撮る必要はないだろう。

しかも、他の女との写真まで……。

雪音が朝美にそんな言葉で文句を言うと、次第に朝美の顔からアルカイックスマイルは消えていった。


『言いがかりも程々にしてちょうだい! それとも、私がその写真を送ったという証拠でもあって?』

『たった今、昨夜がどうとか、自分で言ったばかりじゃない! それって、恋人ですって宣言してる訳でしょ?』

『だったらなんなの?』

『宗さんは、あなたにも愛してるって言ったのね? 陳腐な台詞で、結婚まで匂わせて……。私は知りたいだけよ。本当のことが』


雪音の言葉に朝美の表情は益々険しくなった。


< 96 / 169 >

この作品をシェア

pagetop