FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1
蒼馬のさり気ない気遣いと明るい性格は、聖を救っていた。

彼はそんなことは微塵も思っていないだろうが。人付き合いの下手な聖にとっては、なくてはならない存在であった。

 
そうしているうちに担任が教室にやってきて、皆自分の席に着席した。
 
出欠を取っている間に、聖はルーズリーフを一枚取り出す。

(本当は暇ないんだけど……)
 
サラサラと蒼馬への手紙を認める。先ほど嫌な空気から救ってもらったお礼として、家庭教師を引き受けることにしたのだ。

(バイトの合間の勉強時間、蒼馬のために空けてやるか)
 
聖は年をごまかして隣町のコンビニでアルバイトをしていたのだ。

本来ならば許されない行為だが、それもいつか家を出る時のための軍資金稼ぎのためだった。もちろん、家族には内緒である。
 
『さっきの件だけど、OKだよ。土曜の午後、蒼馬の家に行くから』と書いた手紙を、斜め後ろの蒼馬の机に飛ばす。蒼馬はそれを見るなり、顔を輝かせた。

「えーっ、サンキュー! さっすがセイだよなっ!」
 
シン、と静まり返っていた教室に、蒼馬の声はビンビン響き渡った。

(馬鹿……)
 
担任の恐ろしい目が蒼馬を捉えた。

「堺くん、今の先生の話、聞いてたかな?」

「あーっ……すいませーん……」
 
怒る担任とは対照的に、笑い出すクラスメイト達。

「後で職員室に来なさい。堺くん……それから、天野くん?」
 
巻き添えを喰ってしまった……と蒼馬を振り返り、睨む。しかし蒼馬はへらっと笑って、誤魔化そうとしていた。



< 12 / 280 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop