FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1
呆然とした。
 
今の状況が、解っているようで、解りたくなくて。
 
ただ、落ち着きなく目線を動かしながら、立ち尽くした。
 
そんな聖を見て、ヴァジュラは安堵の溜息を漏らす。

「創造神でない貴様など、恐れるに足らん」
 
聖に向かって、ゆっくりと手を伸ばす……。


『毘沙門天!!』

 
そこに、耳を劈く声が聞こえてきた。

『毘沙門天、一旦退け! こちらの結界に!!』
 
阿修羅王の声だ。聖達の様子に気付き、助け舟を出したのだ。

『お前一人では無理だ! とにかく今はこちらへ!』

「……一人」
 
聖はポツリと呟く。
 
一人。
 
誰もいない。
 
ここにいるのは、自分だけ。

「──嘘だっ…!!」
 
ガクッと膝をつき、四つん這いになる。

「嘘だ……嘘だ、嘘だ!!」
 
信じられない。
 
つい昨日まで、皆はそこにいた。
 
勉強が出来なくてボヤいていた蒼馬も、

そんな彼には厳しくても女子には優しい真吏も、

子供みたいに無邪気に笑う蓮も、

お姉さんのように皆をまとめる紅葉も、

優しい気遣いの出来る李苑も、

そして、心に傷を負いながらも仲間になってくれた十夜も。
 
皆、笑ってそこにいたのに。

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