FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1

「ああああっっ!!」
 
少年は叫びながら飛び起きた。
 
薄暗く、狭い部屋。少し目を動かすと、教科書の散乱した机に、目の前の壁にかけてあるガクランが目に映った。

後ろからうるさく響いてくる目覚ましの音が、現実の世界へと誘ってくれる。

(──夢?)
 
何気なしに額に手をやると、びっしょりと汗に濡れていた。額だけではない。全身、汗だくだった。
 
ただの夢だろうか。
 
いや、夢だろう。現実に空に山が浮かんでいる光景など有り得ない。けれども炎の暑さ、肩を掴まれた感触があまりにもリアルだった。

それに、この夢を見るのは何度目だろう。ここまではっきりとした映像で見たのは始めてだったが。

何とも言えない嫌な感じが少年を取り巻く。


「…お兄ちゃん?」
 
声に顔を上げると、ドアの隙間から妹の沙都美が顔を覗かせていた。ひどく心配そうな顔をしている。

「どうしたの? すごい声がしたけど……」

「ああ……いや、何でもないよ。ちょっとな」

「何でもないならいいけど……。ところでお兄ちゃん、今何時か分かってる?」

「へっ?」
 
少し寝ぼけていたせいもあるのか、少年は少し間の抜けた声で聞き返した。沙都美の顔が少し引きつっているので──おそるおそる目覚まし時計を振り返った。
 
まだうるさく鳴り響いているそれは、七時半過ぎを差している。

「っだーっ! 何でもっと早く起こさないっ!」

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