FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1
昨晩も激しい喧嘩をし、いつものように暴力を受けていたのである。会社の鬱憤をはらすためなのか。最近はますますそれがエスカレートしていた。
昨晩受けた暴力のせいで、右腕が思うように動かなくなっている。それを息子の聖は知っている……。
子供達にとって、いい環境でないことは分かっている。しかし、夫と離婚し、一人で聖と沙都美を育てていく自信が、静にはなかった。
暴力で浮気者の夫の経済力にすがり、優しい息子の助けに甘えて、何てひどい母親なのだろうと、自責の念を抱く。
「ごめんなさい、聖、沙都美……もう少し……もう少し、時間を頂戴……」
湿布薬を握り締め、静はそう呟いた。
遅刻ギリギリで教室に駆け込んだ聖は、自分の机に勢いよく鞄を投げ出し、ドカッと椅子に座った。
「おおーっ、今日も遅刻しないで真面目に登校かな? 天野聖くん?」
後ろから茶化すような声が聞こえてくる。
「ええまあ。俺は真面目な生徒ですので」
相手に合わせて答えてやると、背中をバシバシ叩かれた。
「真面目な生徒がいつも寝坊なんかすんなよなーっ。いつも待ち合わせの場所で待たされる俺の身にもなってくれよー」
「待ってたことなんてないだろ」
と振り向くと、日に焼けた肌をした髪の短い少年が、屈託のない笑顔で立っていた。
昨晩受けた暴力のせいで、右腕が思うように動かなくなっている。それを息子の聖は知っている……。
子供達にとって、いい環境でないことは分かっている。しかし、夫と離婚し、一人で聖と沙都美を育てていく自信が、静にはなかった。
暴力で浮気者の夫の経済力にすがり、優しい息子の助けに甘えて、何てひどい母親なのだろうと、自責の念を抱く。
「ごめんなさい、聖、沙都美……もう少し……もう少し、時間を頂戴……」
湿布薬を握り締め、静はそう呟いた。
遅刻ギリギリで教室に駆け込んだ聖は、自分の机に勢いよく鞄を投げ出し、ドカッと椅子に座った。
「おおーっ、今日も遅刻しないで真面目に登校かな? 天野聖くん?」
後ろから茶化すような声が聞こえてくる。
「ええまあ。俺は真面目な生徒ですので」
相手に合わせて答えてやると、背中をバシバシ叩かれた。
「真面目な生徒がいつも寝坊なんかすんなよなーっ。いつも待ち合わせの場所で待たされる俺の身にもなってくれよー」
「待ってたことなんてないだろ」
と振り向くと、日に焼けた肌をした髪の短い少年が、屈託のない笑顔で立っていた。