平凡太~ヘイボンタ~の恋
「フフッ…。はぁー…。なんか、寂しくなるね?」


「栞の事?」


「…うん」


「栞、幸せになれる、かな…」


「平太くん?幸せってね、降って湧いてくるもんじゃないよ?自分で掴み取るもの。あたし、きっと辻野さんなら自分で幸せを掴んで子供と笑い合える日が来ると思う。きっと…ね?」


そう信じたい。


信じて祈る事しか。


ボクらにはできないから。


「一華先輩は…。今、幸せです、か?」


「そうだなぁ…。あの頃よりは近づいた気がする…カナ」


「あの頃…?」


「いなくなった友詞を想って詞音を抱きながら泣いてた頃。あの時よりはずっとずっと幸せなんだ、って思えるよ?平太くんは?」


「一華先輩が幸せでいるなら、右に同じって感じかな」


「えーっ、何それ?変なの」


一華先輩が友詞を忘れて幸せと思えるなら。


詞音ちゃんに笑顔を向けられるのなら。


ボクは。


それで十分だ。
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