平凡太~ヘイボンタ~の恋
人形を抱いた詞音ちゃんを寝かしつけて、茶の間のテーブルにボクと一華先輩の2人きり。


「平太くん、ビール、飲むでしょ?」


「いえ…けっこうです」


「そ?」


「ハイ…」


かわりに差し出された麦茶には手をつけず、ボクは迷うけどやっぱり聞かずにはいられない。


「どんな…人ですか…?」


「え…?」


「お見合い、いい人でしたか?」


「詞音…から?」


「ハイ、聞きました。“お見合い”はどんな食べ物か、って」


「そう…」


ボクが土足で入り込んでいい話じゃない。


一華先輩が掴みかけているのは。


『友詞』でもボクでもない、別の幸せなのだから。
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