君に、この声を。
音楽室をぐるっと見回しても、怜はいなかった。
少しして、今日はバスケ部と時間が重なっていたということに気づいた。
正直言うと、俺はまだ合唱団に馴染んでいない。
同じクラスということもあって、怜とは仲良くさせてもらっているけど、怜以外の男子といっ1対1で話したことは未だにない。
女子だって、智那としか話したことがない。
女子が苦手な俺だったけど、智那だけは何も気にせずに話せた。
智那の雰囲気が、なぜか俺の何かをほぐしていた。