フライングムーン
第二章
次の日も彼はやってきた。
その次の日も、その次の日も、ほぼ毎日、彼はやってきた。
始めは彼に対してどうしたら良いのか分からなかったけど、いつしか私は彼がインターホンを鳴らすのを待つようになっていた。
そして私は彼を家に入れようと思った。
“どうぞ”と家の中に入るよう促すと彼は少し照れたような顔をして“お邪魔します”と靴を脱いだ。
初めて見る彼の表情に何だか私も照れてしまう。
彼は初めて入った私の家をキョロキョロと見回した。
“座って”とソファーを指差すと彼は静かに座ってまた家の中に視線を放った。
今まで私以外、誰も座らなかったソファーに彼が座っている。
とても不思議な光景だった。
私はコップにジュースを注いで彼の前に出した。
彼は“有難う”と一口飲んだ。
私も彼の向かいに座ってジュースを飲んだ。
また、変な感じがした。
< 3 / 21 >

この作品をシェア

pagetop