家政婦のメイド派遣します!
「他に何か言いたい事でもおありですか?」

相手に言い返す隙など与える気もないくせに、祐樹は眼の前でガクガク震える男に向かって優しく問いかけた。

「おや? 具合が悪いようですね。帰られた方が良いのでないですか?」

佐々木は弾かれたように立ち上がると桃子に向かって90度のお辞儀をした。

「し、失礼しました。」

とにかくこの場から立ち去りたい佐々木は正志に挨拶をするとそそくさと人込みをかき分けて去っていった。

「40過ぎの男がなさけね。」

「佐々木グループの後継ぎはそれでも見込みがあるって言われていたんですけどね…。あれじゃあ害虫にもならない。」

直樹と祐樹が口々に彼についてぼやくのを桃子は他人事のように聞いていた。

「さあ、お姫様。私たちと共に美味しいお菓子を食べに行きませんか?」

「喜んで。」

差し出された2つの手を握り返して、桃子は今日一番の微笑みを2人の大切な王子様へと返すのだった。
< 12 / 101 >

この作品をシェア

pagetop