家政婦のメイド派遣します!
「本日は日本の誇るパティシエ、篠崎正志の新作発表会にお越しいただき誠にありがとうございます。こちらのスイーツは………」

進行役のテレビ局のアナウンサーが一枚ずつ映し出される映像のお菓子を説明している。

桃子は近くのテーブルに置かれた小さくカットされているショコラケーキを1つつまむとポイッと口に入れた。

入れた瞬間に体温で蕩けていくショコラと、食べ終わった後も口の中に残るココアの香が更に食欲を満たしていく。

彼女はついもう一つ、別のケーキに手を伸ばす。

「作ったお菓子はそこら中にあるけれど、肝心のお父さんはどこにいるのよ?」

ケーキをつまみながら辺りを見回しても、やはり父の篠崎正志の姿は見つからなかった。

朝出かけるときに必ず来てくれと父に念を押されてチケットを渡された。

そうした手前、父にしては珍しいお誘いだからとわざわざ仕事を早く切り上げてまで会場に来たと言うのに呼びつけた当人に会えないのでは帰るに帰れない。
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