家政婦のメイド派遣します！
「いいから、俺が呼んでいるっていえば拒否できないから。奴らは。」

三つ子の魂百までとは良く言ったもので、桃子には内緒だが幼い頃に彼女をダシにして散々、蒼に絶対服従を刷り込まれた双子は、今でも蒼を絶対的な存在と見ているのだ。

『蒼兄に逆らえば桃子に会えない。』

これは幼い双子にとっては、それは長い間の最重要事項だった。

そのはずなのに、今になってそれを手放そうとしているらしい。

許すわけにはいかなかった。

「とにかく祐樹に電話しろ。なんなら代わってやる。」

兄の有無を言わさぬ命令に桃子は仕方なく携帯で祐樹の番号を呼び出した。

電話をかけても会議中なので通話に出ないかもしれない。

そうすれば蒼もあきらめるだろう。

彼女はそう自分を納得させて電話の通話ボタンを押した。

なのに、たった２回のコールで電話がつながってしまった。

「桃子？」

祐樹のいつもと変わらぬ優しい声。

「ご、ごめんなさい。」

かけた桃子の方が慌ててしまう。

電話の向こうでクスクスを笑っているのが分かった。

「やっといつもの桃子だね。」

やはり祐樹も気にしていたらしい。

いつもなら定時後の社内会議とはいえ仕事を優先する彼である。

桃子の電話にこんなに直ぐに出ること自体、彼女を随分と気にかけている証拠であった。
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