家政婦のメイド派遣します!
蒼が皿をテーブルに置くのを見届けると桃子は、ぱふっと彼に抱きついた。

料理のいいにおいと懐かしい兄の匂いがする。

桃子がぎゅっと抱きつくと蒼は愛おしい妹の頭を何度も撫でてやった。

「桃子、迷っているって親父に聞いたぞ。」

蒼を抱きしめる腕がぴくっと震えた。

その後、桃子の頭が少しだけこくんと前に倒れる。

蒼の小さなため息が聞こえた。

「あいつら、お仕置きだな。」

彼女の頭上で意地の悪そうな声が聞こえた。

桃子は恐る恐る顔を上げる。

蒼は桃子を自分から引きはがすとせっせと夕食の準備に取り掛かった

「桃子、料理をたくさん作ったから祐樹と直樹も呼べ。」

鍋を火にかけながら蒼が桃子に電話をするように言った。

桃子は会社を出るときにまだ忙しそうに打ち合わせをしていた2人を思い出す。

とても直ぐに終わる会議には見えなかった。

気まずい今の状況ではとても誘う気になれなかった。

「きっとまだ、仕事中だよ。」

桃子がやんわりと断ろうとしたが蒼はニヤニヤしているだけだった。
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