白の森
出血のせいで、顔色が悪くなっているのに、自分たちの身を守っただけだというのに、自分たちに比があるという彼はどこまでお人よしなのだろうか。

彼をここで死なすわけにはいかない。自分のプライドなど捨てても助けなくてはならない。でなければ、部下たちに顔向けなどできない。

「その人死ぬの?」

女が不思議そうな顔でスタンを見つめる。

「傷が深い。このままだと血が足りなくなる」

「そうなの。血を止めるなら、カネアの草の汁が血止めになるわ」

女はそう言うと、傍らに生えている赤い花の咲いた草を引き抜いた。

「意識が飛びそうなら、このショウサの実が気付け薬になる」

女はその二つをアッシュの前に置いた。

「お前、一体何者だ。何故、そんなことを知っている」

「おばあちゃんに聞いたの」

女の言葉を疑うわけではないが、自分とさほど年の変わらない女が何故、そんなことを知っているのだろうか。

けれど、医者もいないこの場では彼女の知識だけがスタンを救えるものだった。

「頼む、スタンさんを助けてくれ」

「今までの非礼は詫びる、だからスタンさんを助けてくれ」

スタン以外に初めて頭を下げた。女に頭を下げるなんて屈辱なだけだ。


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