テレビの中の、人。

7



さっきよりも、確実に体が辛い。


「キャ~!」

他のファンの子達が、ざわめく。


サックンは、ファンに囲まれながら、

チラッとこちらを見た。

嬉しくて、あたしも笑う。


あたしとミズキは、

一歩下がって見てた。

みんながいると、親密にはできないから・・・。



タイチが、隙をみて

(後で電話する。)

ミズキに言うと、


サックンもチラッとこちらを見て、

ビタミンKは、帰って行った。



「りえ、今日店休みなよ!」

歩きながら、ミズキが言う。


「だって、サックン達が店に来るかもよ。」



そのうち、

タイチからの電話が鳴った。



「店に来るって。」

電話を切って、ミズキが言う。


「ほら、やっぱり!嬉しい・・・!」

「りえ・・・。」



ミズキが何度止めても、

あたしは店に行った。




10時を過ぎた頃、

また、ビタミンKがやって来た。



「いらっしゃい!今日はリョウも一緒だね!」


「久々にね、俺も飲もうかなって。」




いつもの5番テーブルに通した。

今日は、あたしとミズキと、マミがつく。


サックンが来た嬉しさに、

一瞬辛さを忘れられる。


土曜日の忙しさに、

このテーブルに、ずっとついてられない。

今日に限って、

次から次へと、指名客が重なる。



カウンターに座り、

チラッと5番テーブルを見た。



サックンに、マミがべったり付いている。

あたしは、それが気になって、気になって、


上の空で、客に付いていた。




「!!」



その時、

付いていた、指名客の手が、


あたしの胸を触った。



「・・・田中さあん、やだな、ここオサワリ禁止だよ。」


「たまにはいいじゃん、ねぇ・・・、りえちゃん。」


「・・・えぇ~。」



この客は、たまに来る

たちの悪いオヤジ。

見るからにスケベそうだが、

今日は特別酔っている。




「・・・もぉ~、止めてください。」

何度言っても聞かない、田中のオサワリに、

だんだん、あたしも本気になる。


熱で、頭がクラクラする。


だんだんエスカレートして、

体中を触る田中に、ボーイが気づく。



やがて、

他の客や、サックンも、気づいたみたい。



「お客様、当店は、オサワリは禁止でございます。」

ボーイの注意に、田中は、

「うるさい!金払ってんだ!ちょっとくらい触らせろ!」



みんな一斉に、こちらを見た。


< 20 / 41 >

この作品をシェア

pagetop