ブルーブラック2
「そんなに、気になる?」


その手に取った髪の先に口づけをするようにしながら小さく言った智の一言。
百合香はさっきの椿の助言を思い出し、ハッとして智を再び見上げた。


「斉藤隼人、知り合いだったんだ」
「し、知り合いというか···椿の、後輩で···」


弛《たる》ませて掴まれている筈の自分の髪の毛が、簡単に解放されそうでされない。
そして漆黒の瞳がブレることなく自分の目を捕えていて、心までも解放されそうになかった。


「智さん··?」
「椿くんの、ねぇ…。まぁ、せいぜい指導頑張って」


どこか怒っているようなその言葉に百合香は何もやましいことなどないのに焦ってしまう。
今繋がっている、髪を掬う手を離されたら心も離れてしまう気がして――。

そんな切なくも悲しいような想いで百合香は智を見つめると、その瞳で智が吸い込まれるように百合香の桜色の唇に自分の唇を押しつける。


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