ブルーブラック2
「この海のどの部分が理想に近いですか?」
「中央よりも手前側の···少し薄い、というか明るいというか··そのへんの部分なんですが」
「わかりました。ではお客様はどうぞ今生まれるインクの名前を考えていてください」
第一号のお客様。
百合香も初めてのインク作りに興味津々である。
鮮やかな手さばき。
それはまるでバーテンダーのようで、普段の大きな体格で万年筆と向き合って細かな作業を身を丸めてしているのとは違っていた。
シェイカーに次々と注いでいくインクの分量を何やら金山はメモを取りながら真剣な面持ちで作業をしている。
女性は目の前に置かれている自分の持参した切り抜きを見つめて金山の言うとおりに名前を考えているようだ。
そんな光景を通り過ぎるお客が足を止めて見入っている。
そのお客は一人、二人···と徐々に増え始めていた。
(どんな色合いになるんだろう)
百合香も自分が店員ということを忘れてお客と同じように見入っていた。