ブルーブラック2

ディスプレイには百合香の弟、隼人の先輩にあたる椿の名が表示されていた。


「椿?」


こんな修羅場にも関わらず、弟の名前を聞くとどこか心が和む。

しばらく鳴り続ける電話を手にして迷っている隼人に百合香は視線を送った。

そして、その視線を受けて、隼人は通話ボタンを押して耳に充てた。


「―――も、もしもし」


(一体何の用だろう)


そんなことをふと思ったりもしたが、もともと二人が仲のいい関係なのだからどんな件で電話が来ても不思議ではない。

それを思い出した後、百合香は智を思い出す。


こんなとき、必ず智は自分を追ってきてくれる。

けれど、どうして今、姿が見えないのだろうか。

自分の携帯を取り出して着信がないかを確認してみるが、何も変わったことはなかった。

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