ブルーブラック2
「―――由来、あるんだろう?」
それ以上百合香を逆なでしないように智は優しく問う。
百合香はそんな優しい声に、少しずつ両手を外してぽつりぽつりと説明を始めた。
「・・・shinryoku・・・ローマ字にしようと思って」
「うん」
「あの・・・色々と意味合いが取れる気がして」
「色々?」
「例えば―――新緑とか深緑とか。智さんて新しいことを生み出したりしながらも深くちゃんと考えていたり・・・っていう連想と・・・」
話し始めた百合香はじょじょに自分の考えを口にしていく。
智は初めこそ相槌を打って聞いていたが、だんだんとそのまま口を挟まずに百合香の言葉に耳を傾けた。
「あとは、心力とか深力とか・・・当て字だったりしますけど――信じる力の信力とか・・・なんかちょうど今の感じにぴったりな気がしちゃって」
一人苦笑しながら百合香は目の前の2枚の紙に視線を落としながらそう言った。
そして智の書いた紙だけを見てにっこりと微笑んだ。
「私にとってこういう力強く、深くて、でも濃淡が綺麗な緑色。こんな温かで大きく包んでくれるようなイメージだったんです。智さんは」
「・・・百合香も俺をイメージして作ったの?」
「はい!・・・あ」