ブルーブラック2

智が自然な流れで百合香にそう聞いた・・・筈だった。
それでも百合香はその質問になかなか答えようとしなかった。


「・・・?」
「な、なんか―――」


不思議に思って智は百合香の言葉を待ちながら顔を窺う。
百合香は智の視線が自分にあることに気付きながらもそちらを見れずに目を泳がせてたどたどしく言葉を繋いだ。


「は、恥ずかしい・・・・デス」


なんとなく自分の作ったインク。自分の命名したものを発表するのは気恥かしい。
それはまだ伝えてはいないけれど、この智に贈ったインクは“智をイメージしたもの”だからなのだった。


「・・・へぇ。でも、絶対聞くまで逃がさないけど?」
「!!」
「・・だったら、少しでも早く言ってしまった方だいいと思うけど」

(~~智さんのオニ!)


智に詰め寄られて百合香は観念したようにぼそっと言った。


「・・・shinryoku・・・」
「え?」
「“しんりょく”です」
「しんりょく?」


智に聞き返されると、百合香は堪らなく恥ずかしい気持ちになって赤くなる顔を自らの両手で覆って俯いた。




< 316 / 388 >

この作品をシェア

pagetop