ブルーブラック2

その言葉を聞いて今にも百合香を抱きしめたい智だったが、まだ百合香の言葉を最後まで聞いてないと思いなおして寸でのところでそれを堪えた。

何より、そうだったのなら、普通手放しで喜んで満面の笑みで百合香は今目の前に居る筈なのだから。


「陽性反応が・・・?」
「・・・・出たんです。でも、」
「でも?」


そこまで確認をした後ならば、智はもう百合香のその不安な心の原因が分からなくてすぐに聞き返した。


「でも、まだちゃんと病院で診て貰っていないから・・・心拍確認とか・・・私、ダメですね。何かあった時のショックを最小限にしたくて、保守的な考えしか浮かばないなんて」


そう言われて智は思い出した。
一時期百合香は色々と調べたりしていたことを。

子供を授かったこと自体誰もが奇跡――が、悲しいことにその後、育たずにお別れするというケースも決して世の中では稀ではないようで。

だから、百合香は手放しで喜んでいいのかどうか葛藤していることでの“怖さ”のことを言っていたのだと理解する。


授かることも奇跡なら、無事に育って産まれてきてくれるまでもまた奇跡なのだと百合香は思っていてのことだった。



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