ブルーブラック2
それから事務所も電話も来客もなく、しばらく静かな時間が続いていた。
「お疲れ様でーす」
智も江川も自分の仕事に集中していた時に、ドアから坂谷が休憩でやってきた。
「お疲れー」
「お疲れ」
江川に続いて智も挨拶だけ口にした。
坂谷は、事務所の静かな雰囲気を悟って、何気なく2人の方へ近づいて話しかけた。
「今日一日こんな感じっすかねー」
「暇すぎると時間経つの遅いよなぁ」
坂谷の話に答えたのは江川。
智は話は聞いているが、黙々と目の前のディスプレイと対峙していた。
「…柳瀬さん、やけに集中してません?」
「そりゃーあれだろ。あれ。集中したいんだろ」
「なんですか、それ」
「集中してないと、意識持ってかれんだろ、きっと」
しばらく収まっていた江川の冷やかしが、再び坂谷によって始まった。
それに乗っかって、坂谷も話に花を咲かせ始め、その場に居座る。
いい加減、耳が痛くなった智が、睨みを利かせて2人に噛みつく。
「…おーまーえーらーー…」
『プルルルルッ』
そんな和やかな空気の中、久しぶりに事務所内に電話の音が聞こえた。