ブルーブラック2


「こんにちはー」
「いらっしゃい、元気だった?」


それから2日後の土曜に、百合香は碧と大地をつれて、まどかの家へと遊びに来た。


「最近は忙しいみたいね? 柳瀬くん」
「あ、はい。3月が間近なので、いろいろやることあるみたいですね」
「うちも、久々の万年筆コーナーで3月迎えるから、必死みたい」


まどかとは、もう5年以上の付き合いになる。
まどかの夫は江川勇介(えがわゆうすけ)。自分の夫の同期であり友人だ。

その繋がりで、百合香も家族ともども仲良くさせて貰っていた。


「あ、碧! 早く来いよ!」
「……おじゃまします」


奥のリビングから嬉しそうに碧を呼んだのは、江川英太(えいた)。
江川家の長女・朱里(あかり)の弟で、碧と同級生だ。


「ちょーど今、姉ちゃんがゲームから抜けて、相手いねぇんだ。やろーぜ!」
「あ、朱里お姉ちゃん、こんにちは」


英太が意気揚々と碧に話しかけるが、碧はそんなこと後回しかのように、近くに居た朱里に挨拶をした。


「こんにちは。ごめんね。わたしこれから友達と約束があって…」
「ううん。今度また遊んでね」
「うん 。あ、それ、英太に?」


子どもと言えども、女同士の雰囲気はなかなかのもの。英太は遠巻きにしか入れず、視線を送るだけ。
そして、その英太には聞こえない声で、朱里は碧の肩に掛けてあるトートバックを指して言った。


「まさか! これは、その……」
「だよねぇ。碧ちゃん、いるんだ。好きな人」


ニンマリと朱里が言い当てるから、碧は黙って顔を赤くする。

「今度、教えてね!」と、朱里は碧に言って、出掛けてしまった。


「…おーい。早くやろうって!」
「もう…! 英太うるさい! わたし今日はそんなにひまじゃないの!」


姉の朱里がその場から居なくなると、英太が碧を呼び寄せる。
しかし、碧は英太のところへ行かずに頬を膨らませて答えた。



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