ブルーブラック2

「あおいはこれからおとーさんの…むぐっ!」


玄関でまだ立ち話をしている百合香とまどかのところから、大地がとことこと一人でリビングまで来る。

そして、碧の代わりに英太へ何かを教えようとしたところに、碧の手が伸びてきて口を塞がれた。


「…ちょっと! 大地、ほんとよけーなこと言わないの!」
「…よけーなこと?」
「そう。英太になんかカンケーないんだから……」


碧は3歳の弟に対して必死だ。

それは、大地の口が達者ということもあるが、一番の理由はほかにある。


「『カンケーない』ってなにがだよ?」
「――だから、カンケーない、の!」


碧がそう言い切ったときに、ちょうど百合香が玄関から話しかけた。


「碧! そろそろ行こうか?」
「う、うん!」


“助かった”と言わんばかりに、碧は百合香のもとにすぐに駆け寄ろうとした。


「お、おい……」


てっきりいつものように、長居していくものだとばかり思っていた英太は、慌てて碧を追った。

すると、碧はぴたりと足を止め、振り向いて手を突き出した。


「あ……これ…って」
「――バレンタイン! 一応ね!」
「さ――サンキュ…」
「“ぎり”よ、“ぎり”!」
「『ぎり』?」
「弟がふたり、みたいなものだから!」


ぷいっと碧はそっぽを向いてそういうと、足早に百合香の元に行き、まどかに挨拶をする。
英太がぽかんとその碧を見ている横を、大地は走って玄関に戻る。


「じゃね! 英太にーちゃん。と、おばさん!」


そして、バタン、と玄関の扉が閉まってから英太が漏らす。


「――なんだよ…」


“つまらない”“がっかり”

そんな顔をしていた英太を、まどかは苦笑して言った。


「あんたの恋、前途多難ねぇ」




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