ブルーブラック2
一人きりになった碧は、ゆっくりと店内を歩き進める。
キラキラとしたシールや、便箋、封筒など可愛らしい商品がずらりと並ぶ棚を眺めながら――――。いや、そうではなかった。
碧の年頃なら、ほとんどの女の子が興味をひかれるような商品にも目もくれず、碧は“ある人物”を探していた。
棚と棚の通路をキョロキョロと確認して、ドキドキとしながら歩く。
そんな碧の背後に、コツッと足音が近づいた。
「いらっしゃい」
「きゃ!」
その足音が止まってすぐ、肩に手を置かれた碧は声を上げた。
目を見開いて振り向くと、そこには一人の店員が爽やかな笑顔で立っていた。
「そんなに驚いた? ごめんね」
目を細めて、屈託なく笑う目の前の店員。
碧はその人を見つめて、固まってしまう。
「――あれ? 忘れちゃった…かな。オレのこと」
「お、おぼえてますっ…!!」
膝に両手をあてて、自分の顔に近づいて笑う。その顔を見て、碧は頬を赤くした。
「ちゃんと、おぼえて…ます。…じゅんお兄ちゃん…」
「お! ほんとだ! よかったー!」
トートバックを前に抱え、口元を隠すように、小さな声で碧が言った。
その答えに笑顔になったのは、かつての百合香の先輩、坂谷純(さかたにじゅん)だ。
「碧ちゃんは、柳瀬店長のとこに行かなかったんだってね。今、桜井さんから聞いた」
碧は顔を覗き込まれるようにして、聞かれたことに、こっくりと大きく頷く。
「あ、そっか。文房具、これから色々必要だからかな?」
ぽんっと、何気なく頭に乗せられた大きな手が、自分の父親とは違って感じて、碧はさらにドキドキを増す。
そして、きゅっと自分のカバンを抱きしめる手に力を入れた。
「もう一年生かー。早いなぁ。ちょっと前までこんなに小さかったのに」
坂谷はくすくすと笑って、赤ちゃんを抱く真似をしながらそう言った。
碧はそんなふうに言われるのが、なんだか恥ずかしく、そして複雑な気持ちになってしまう。
「ん? なんか変なこと言っちゃったかな、オレ」
少し元気なさそうになってしまった碧に坂谷は気付いて言った。