ブルーブラック2
「……もう、赤ちゃんじゃないもん」
「え? ああ! そうだよね」
それでもやはり、晴れない顔のままの碧に坂谷は困った笑顔を向けた。
そして頭をそっと撫でて見つめて言った。
「もう“女の子”だもんね。ごめんね」
坂谷に“女の子”扱いをされた碧は、顔を真っ赤にしながらも喜んだ。
その流れで、碧は勇気を出して、持っているカバンに手を入れた。
その中からひとつ、決して上手とは言えないラッピングをしたものを取り出した。
「じゅ、じゅんおにーちゃんにっ」
「えっ?」
「あの、ば、バレンタインだからっ」
小さな両手にある淡いピンクの贈り物。
それを目一杯手を伸ばして坂谷に差し出した。
そんな碧と、目の前のピンクの包みに、坂谷は目を丸くして、自分を指差して「オレに?」と聞く。
碧はちらっと坂谷の顔を見て、小声で「うん」と答えた。
そんな碧が可愛くて、坂谷も少し照れた
様子で、想いの詰まったそれを、そっと受け取った。
「ありがとう」
自分の手から、そのチョコレートを受け取って貰うと同時に、明るい笑顔を坂谷に向ける。
坂谷は小さな碧をまっすぐと見て、言う。
「碧ちゃんは、やっぱりお母さんに似てるね。きっともっとステキな女の子になりそうだ」
そんなことを言われたら、碧はもうどうしようもなくなる。
ただ、目の前の“好きな人”を見つめるだけで精一杯。
「あ、そうだ」
「?」
屈んだままの坂谷が、何かを思いついたように胸ポケットに視線を移した。
そして、そこから一本のペンを抜き取って、碧に差し出す。
「これ、貰い物なんだけど。碧ちゃんによかったらあげる」
坂谷の手のひらにあるペンは、きれいな水色の本体に水玉模様。その天冠部分がうさぎのキャラクターになった可愛いボールペン。
坂谷が自分の趣味で用意したわけではない。
異動で1階の担当になり、それからメーカー側がサンプルとしてくれたものをそのまま胸ポケットにさしてあったものだ。
それを碧はそっと掴んで眺めた。
そして、満面のーー天使の笑顔を向けて言う。
「ありがとうっ…うれしい!」