ブルーブラック2
*
「おとーさーんっ」
「――大地⁈」
事務所で予想外の来客に困惑して、智は席を立った。
「どうして――…百合香?」
「ごめんなさい。――ちょっと近くに来たから…」
百合香は少し間を空けてそう言った。すると、大地が智のズボンを掴んで話始める。
「あのね! あおいが、あいたいからだよ」
「大地!」
「『あいたい』? 誰に?」
大地は色々と見たり聞いたりしていた。
それでなくとも、同じ月齢の友達よりも、姉がいるせいか大人びている。
だから今日、どうしてここに来たのかくらい、わかっていた。
しかし、“ヒミツ”ということが難しいところが3歳児だ。
なんでもかんでも話してしまう。
百合香には大地が言いたいことがわかってしまったので、名を呼びとめようとするが、もう遅い。
智が質問するのを聞いて、百合香は諦めて、溜め息を吐いた。
「んとね。じゅんにーちゃん」
「じゅん…て、坂谷?」
先程、綾が智は『休憩だ』と言っていたのは本当だったようで、そのまま大地を抱き上げる。
そして、もう一度智は大地に聞いた。
「碧が、どうして坂谷に会いにくるんだ?」
「ちょこの日だからー!」
「……」
「あの、智さん……」
意気揚々と大地は素直に答えたが、その答えに智は目を丸くして何も言えなかった。
『ちょこの日』という意味はすぐに理解した。
店でも、“バレンタイン”に向けての商品や特設売場などを設けていたのだから。
それもわかっている百合香が、窺うように智の顔を見た。
「あおい、かばんにぴんくのちょこもってたー」
次々と大地の口から事実が告げられて行くのに、百合香は頭を抱えてまた溜め息をつく。
「おとーさーんっ」
「――大地⁈」
事務所で予想外の来客に困惑して、智は席を立った。
「どうして――…百合香?」
「ごめんなさい。――ちょっと近くに来たから…」
百合香は少し間を空けてそう言った。すると、大地が智のズボンを掴んで話始める。
「あのね! あおいが、あいたいからだよ」
「大地!」
「『あいたい』? 誰に?」
大地は色々と見たり聞いたりしていた。
それでなくとも、同じ月齢の友達よりも、姉がいるせいか大人びている。
だから今日、どうしてここに来たのかくらい、わかっていた。
しかし、“ヒミツ”ということが難しいところが3歳児だ。
なんでもかんでも話してしまう。
百合香には大地が言いたいことがわかってしまったので、名を呼びとめようとするが、もう遅い。
智が質問するのを聞いて、百合香は諦めて、溜め息を吐いた。
「んとね。じゅんにーちゃん」
「じゅん…て、坂谷?」
先程、綾が智は『休憩だ』と言っていたのは本当だったようで、そのまま大地を抱き上げる。
そして、もう一度智は大地に聞いた。
「碧が、どうして坂谷に会いにくるんだ?」
「ちょこの日だからー!」
「……」
「あの、智さん……」
意気揚々と大地は素直に答えたが、その答えに智は目を丸くして何も言えなかった。
『ちょこの日』という意味はすぐに理解した。
店でも、“バレンタイン”に向けての商品や特設売場などを設けていたのだから。
それもわかっている百合香が、窺うように智の顔を見た。
「あおい、かばんにぴんくのちょこもってたー」
次々と大地の口から事実が告げられて行くのに、百合香は頭を抱えてまた溜め息をつく。