ブルーブラック2

智は食事に手もつけずに、そのブルーの包装を丁寧に解く。
そして中から丸い箱を見つけると、そっとその蓋を開けた。


「チョコレート…“一応”俺にも作ってくれたのか」
「そりゃそうです」
「え?」


物ごころがついた頃から、毎年智は碧から、バレンタインにはチョコレートを貰ってきた。
しかし、今年は昼間の件――坂谷という“本命”がいるのを知ってしまったから、自分にはないものだと決めつけていた。

百合香は頬杖をついて、にっこり笑いながら話す。


「まだまだ、碧の中では智さんが一番なんですから」


その百合香の言葉を聞いて、智はきょとんとする。


「あー…いや。だって、一番は、アイツだろ? ボールペンを握りしめて寝るくらい」
「――――ぷっ」


拍子抜けした智がそんなことを言うものだから、百合香は思わず吹き出してしまう。


「確かに。坂谷さんを好きなのは好きですけど、同率1位なんです」
「は?」
「“ヒミツ”ですよ?」


そう前置きをして、百合香は前のめりになって智に耳打ちをする。


「『じゅんおにいちゃんはやさしくてすき。だけど、おとうさんはかっこいいからすき』なんだって」


そしてさらに思い出し笑いをしながら、百合香は続ける。


「『チョコ、二人にあげちゃ、だめ?』なんて言うんだから。ほんと、真面目なんですよ、碧は。だから言っちゃった」
「なんて…?」
「『それが碧のほんとの気持ちなら、いいんじゃない?』って」


智はチョコレートに視線を落としたまま黙って話を聞く。
百合香は困ったように笑った。


「ランドセルも、智さんが『似合う』って言ってから、今日も私に背負って見せるんですよ? そんな碧に、智さん以上の存在が出来るだなんて、まだまだ考えられないです。だいたい『かっこいい』のが、坂谷さんではなくて、智さんっていうんだもん」
「……そう。でも“同率”なヤツは出来たんだな」
「ほら、やっぱり妬いた――…んっ!」


元々独占欲が強い智を知る百合香は、本音を聞いて笑いかけた。
すると、少しむっとした表情を浮かべた智が、前のめりのままの百合香の口を塞いだ。


「ん、ちょ…っ! んん!」


突然の噛み付くようなキスに、百合香は驚き抵抗する。
だけど、全くやめる様子のない智は、聞こえてないかのように百合香の唇を奪い続ける。

声を出したくても出させてくれない。
そして、何より愛しい夫からの激しいキス。

とうとう力が抜けて、言葉を出すことも出来なくさせられた百合香はそのまま智に委ねた。



< 387 / 388 >

この作品をシェア

pagetop