ブルーブラック2

「百合お姉さん!」


振り向くと期待していた人ではなく、ほっとしたような、がっかりしたような気持ちですぐそこにいる隼人を見た。


「どうかした?」
「いや、姿見えたから。坂谷さんに目つけられて、今お客様に捕まってたから逃げてきました」
「ああ!坂谷さんに···」


隼人は軽いノリでそう説明すると、百合香は手を口にあててくすくすと笑った。


「坂谷さん、すごくいい人だから仕事ちゃんと教えてくれるよ」
「指導担当百合お姉さんならいいのに」
「え?」
「でも担当じゃなくても教えてくれますもんね」


ニコニコと智とは違う真夏のような笑顔を受けて、百合香はなんだかこそばゆくなった。


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