ブルーブラック2
(··あれ?)
百合香はボタンに手を掛けようとしたが、まだ触れていない。
なのに扉が再び光を射し始めてゆっくりと開いて行く。
「あ!」
「···何してるの」
その光を背負って正面に立っていたのは智だった。
エレベーターから降りるのか降りないのかどっちつかずの百合香に不思議そうに、呆れたように。智は一言百合香に言った。
「あ、ちょっと··ボーっとしていて」
「ふぅん···」
扉に手を掛けて抑えたまま智は百合香をじっと見つめる。
百合香はその瞳が、何もかも見透かされそうで視線を逸らす。
「あの、実は今日···椿と食事に··」
百合香が智の視線に負け、正直に話し始めた時だった。