君の声がききたい
「なんだ、いるじゃん。なに居留守使ってんだよ」

「………!」


ドアを開けると、そこにはやっぱり隼人の姿が…

隼人はロンTに短パン姿で、髪や服が少し濡れていた。




「…傘は?」

「持ってきてねえよ。」

「なんで?」

「家目の前なんだから、いらないじゃん」

「もう…」


あたしはバスタオルを持ってきて、隼人にわたす。

隼人は「サンキュ」と言って、体を拭いていた。



「つーか、ひとり?おばちゃんは?」



「ひとりだよ。お母さん、今日は会社の飲み会なんだ」

「ふうん。あがっていい?」

「…うん」


バスタオルをあたしに返して、靴を脱ぐ隼人。

あたしはバスタオルを洗濯機の中に入れて、冷蔵庫からペットボトルのお茶を出して隼人にわたす。



「ありがと」

「うん…」


隼人はリビングの床に、あぐらをかいて座った。

あたしは隼人から離れたソファーに座る。




「…どうしたの、急に来たりして。何かあった?」


さっきまで隼人のことで泣いていたから、隼人に気づかれないよう、少しそっけない言い方になってしまう。
< 297 / 314 >

この作品をシェア

pagetop