HERO
空耳かと思った。


玄関から聞こえた私を呼ぶ声を。



走って部屋に入って来たのは、来るはずのない、わんこ。



汗をたらしながら、息を切らしながら。


そんな走ったら、倒れちゃうでしょ、熱があるのに。



どうして、ここにいるの。



「美亜、どうしたい?」


さっきまでとは打って変わって、優しく微笑みながらそう聞くそいつ。



これは、ずるい悪魔の質問。


だって、私はわんこをこの部屋から追い出さなきゃならない。



何も、知られちゃいけない。



「早く、シて。早く...」


「だって。悪いけど、君、出てってくれるかな」



お願いだから、出てって、私に構わないで。
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