悪い背中。
悪い背中。
「淳子さん、淳子さん。もうそろそろ起きないとマジで会社に遅刻しちゃいますよ」
「う、ん…。あと少し」
耳元で優しく囁く彼の声で、私はいかにも今目が覚めたようにゆっくりとまぶたを押し上げる。
本当は彼が起きるずいぶん前から目は覚めていたのだけれど、この起こされる瞬間が好きで、彼と寝た翌朝は決まって狸寝入りだ。
いや、彼のことだ、私の目が覚めていることなどお見通しだろう。
あえて私の好みに合わせて毎回、律儀に起こしてくれるのだ。
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