嗜虐的症候群
サディスティックシンドローム

竜司君が料理を作ると言い出した。


手先は器用な竜司君だけど、料理のセンスはかなりの未知数。


ゴミ箱にはカップヌードル。冷蔵庫はもぬけの殻。台所には真新しい調理器具。


嫌な予感しかしないので手伝うと言ったけど、竜司君は「大丈夫」の一点張り。


仕方がないので竜司君を信じ、大人しくテレビを観ていたけれど……。


「いったぁ!?」


台所から聞こえる悲鳴。予想通りの展開に。


急いで駆け付けると、竜司君は右手に包丁を掴みながら左手を見つめていた。


人差し指の先から、小さな赤い露がプックリと溢れている。


美容師の竜司君にとって指は命の次に大切なもの。


少し焦ったけど、幸い傷は深くなさそうだ。唾でもつけとけば治るレベル。


……そう、唾でもつけとけば。
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