嗜虐的症候群

「あはは、やっちゃった。ちょっと待って、すぐに洗うから」


洗い場で血を流そうとする竜司君の前に立ちふさがり、傷を負った左手を掴む。


「千秋?」


「治してあげる」


不敵に微笑み、竜司君の人差し指を自分の口元に運んだ。


舌先に拡がる皮膚の感触。鉄の味を味覚が感知し、それを味わうように口をすぼめた。


「ちち千秋!?」


頭上から上ずった声。視線だけを上に向けると、顔を真っ赤にさせて目を泳がせている竜司君が瞳に映った。


嗚呼、イイ。その動揺してる顔、最高にイイよ。


傷口を抉るように血液を舐め取りながら、わざと唾液を出して水音が鳴るように口を動かす。


首まで真っ赤にさせた竜司君はされるがままで、視線を横に向けながら生唾を飲み込んだ。


可愛い反応。だからこそイジメがいがある。
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