いきなり王子様
「は?」
くすくす笑う井上社長は、驚く私に構う事なく
「相模恭汰もすごい人だと思うけど、俺にしてみれば、竜也の気持ちを掴んだ奈々ちゃんの方がよっぽどすごいと思うね」
椅子の背に体を預け長い足を組みながら、井上さんは満足げに頷いた。
「あの……その……」
井上社長の言葉が、よくわからない。
というよりも、今私の目の前にいることに、現実味も覚えられないんだけど。
「俺は奈々ちゃんのことを良く知らないけどさ、それでも竜也が惚れた女っていうだけで、俺の中の特別枠に入れてやるよ」
社長とは見えない若さに、ただ驚いていたけれど、その口から飛び出す言葉は、まさに社長という立場にふさわしく強気全開。
自分が話す言葉に自信がありありと見えて、ある意味気持ちがいいほどだ。
社長としての仕事ぶりも、相当なものだろうと想像できる。
「今日は相模さんに会うのを楽しみにしていたけど、それ以上に竜也のお姫様に会うオプションを楽しみにして来たんだ。予想以上に竜也が面食いだったってわかっただけでも収穫収穫」
満足げに笑う井上社長に、どう答えていいやら居心地が悪くて、私は手元に積まれていた資料を意味なく揃え直す。
面食いなんて、露骨すぎる。
見た目のことを言われる事に抵抗感を持つ私には、結構な刃だ。
「竜也が、美散以上に大切にする女の子とようやくめぐり会うことができて、それもこんな綺麗でさ。俺もほっとした」
「それって、どういう」
井上社長の言葉に、鋭く反応してしまう。
そんな言葉を聞かされた私にとって、美散さんの存在は脅威以外の何物でもない。